突然ですが、あなたは歯茎からの出血を経験したことがありますか? きっと多くの方がYESと答えるはずです。 歯茎からの出血は、一時的なものであれば決して珍しいことではありません。しかし頻繁に起こったり、血が止まりにくかったりする場合は注意が必要です。
目次
1.歯茎から出血するのはなぜ?
歯茎の出血の原因として考えられるのが、歯周病です。「歯周病は高齢者がかかりやすい病気」という認識をお持ちの方もいるかもしれませんが、それは誤りです。
中年以降に見られる「歯周炎」のほか、子どもを含む若い世代によく見られる「歯肉炎」も歯周病の症状の一種なのです。
それぞれの違いは次の通りです。
1-1.歯肉炎
その名の通り、歯茎が炎症を起こした状態です。子どもや若者に多く見られ、炎症は歯茎だけに留まっています。出血のほか、赤い腫れが見られることもあるでしょう。
平成23年に行われた「歯科疾患実態調査」では、小中学生の約4割、成人の約半数に歯肉炎の症状が見られることが明らかになっています。
原因として挙げられるのが、磨き残しのプラーク(歯垢)です。プラークに含まれる細菌が歯の支えとなる組織に攻撃し、歯肉が炎症を起こします。
正しいブラッシングを行うことで、症状は緩和されるでしょう。
1-2.歯周炎
歯肉炎が進行すると、歯周炎になります。放置したプラークや歯石がどんどん付着し、歯周ポケットへ歯石が溜まって深くなるのです。さらにプラークなどが溜まりやすくなり、膿が出る場合もあります。
この段階になると、歯茎だけでなく歯を支える骨(歯槽骨)にも影響が出ます。炎症によって、歯槽骨が破壊されてしまうのです。
歯槽骨は徐々に溶け、歯がグラグラとするようになります。そして最終的に、歯を失います。
歯肉炎の段階では症状が歯茎のみに留まっていますが、歯周炎の場合は手術をしなければ治療できないこともあります。
予防のためには正しいブラッシングに加え、定期的に歯科検診を受けることが大切です。日々のブラッシングで生じた磨き残しを、プロの歯科クリーニングによって取り除くことができるからです。
また女性は、ホルモンバランスの変化も大きく関係します。妊娠中や更年期、思春期などは特に注意が必要です。
2.歯周病以外で出血することはある?
毎日適切なブラッシングをして歯科検診を受診していても、歯茎からすぐに出血する場合は次の理由が考えられます。
2-1.全身性疾患
歯茎の出血に加え、慢性的な倦怠感や発熱、鼻血などが同時に見られる場合は全身性疾患※の可能性があります。傷の治りが遅かったり、アザができやすかったりする場合も注意が必要です。
※再生不良性貧血・白血病・血友病・血小板減少性紫斑病・ネフローゼ症候群など
2-2.薬の副作用
小児用のバファリンやワーファリンなど、血液の循環を高める薬を服用している場合は、副作用として出血が止まりにくくなっている可能性があります。
2-3.ビタミン欠乏症
ビタミンC・ビタミンD・ビタミンKのいずれかが欠乏している場合、出血しやすくなることがあります。
2-4.不適切なブラッシング
歯を磨くときに、歯ブラシで強くこすっていませんか?
知らず知らずのうちに歯茎を傷つけ、出血につながっている場合があります。
歯をキレイにしたい気持ちはわかりますが、強く磨きすぎると歯茎に負担がかかります。適度な力で、歯ブラシを正しくあてて磨きましょう。
正しいブラッシング方法を知りたいときは、歯科医院で相談することをおすすめします。
3.とにかくプラークの除去が大切!
せっかく毎日歯を磨いても、不適切なブラッシングであればプラークは除去されません。
その状態を放っておくと、プラークは硬くなり歯石ができ始めます。
歯石化すると、日々のブラッシングでは取り除くことができません。そして歯石にまたプラークが付着し、慢性的な炎症を引き起こしてしまうのです。
歯周病は、進行すると歯を失ってしまう恐ろしい病気です。また近年は、歯周病が原因で脳梗塞や生活習慣病を引き起こす可能性も示唆されています。
歯だけでなく全身が健康であるためにも、日々の正しいブラッシングと定期的な歯科検診で歯周病を予防しましょう。
また歯茎の出血が頻繁に見られる場合は、一度歯科医院を受診してください。適切な治療を早めに受けることが大切です。