歯列矯正を行うにあたり、周囲に目立ちにくい方法の一つとして「インビザライン」が挙げられます。
透明のマウスピース装置を用いるため、至近距離で見ない限り気付かれる心配はありません。
そのような魅力がある一方で、治療中の口腔ケアに関して懸念点があります。ブラッシングをするたびに装置を外さなければならないため、外出時は手入れがしにくくなるのです。
日中仕事や学校へ行っている方は、汚れを落とせず歯石が付着しやすくなるでしょう。
歯石は自宅でのブラッシングで落とせないため、どんどん蓄積されて歯の移動を妨げます。最悪の場合、装置を作り直す羽目になり治療期間が長引くでしょう。
そこで今回は、歯石がインビザラインの治療に及ぼす影響について解説します。
目次
歯石の付着がインビザラインに及ぼす影響
本題へ入る前に、皆さんは「歯垢」と「歯石」の違いをご存知でしょうか。まずはその点について、詳しく解説します。
歯垢と歯石の違い
歯の表面に付着する、細菌のかたまりを「歯垢(プラーク)」と呼びます。食後4~8時間程度で作られ、歯垢1グラムあたりに、なんと1,000億個以上の細菌が生息しているともいわれています。考えただけで恐ろしい話ですよね。
歯垢が付着した状態を放置すると、糖分をエサにして酸を放出します。そして酸が、歯の表面のエナメル質を溶かしてむし歯となるのです。
歯垢が唾液中のカルシウム・リンと結合し、石灰化すると歯石になります。「歯石=歯垢が石化したもの」と認識しておくとよいでしょう。
歯石はブラッシングで落とせず、ザラザラとした表面のため上へどんどん歯垢が付着しやすくなります。歯石がついた状態を放置すると、口腔環境は悪化の一途をたどるでしょう。
歯石が付着するとどうなる?
歯石になった時点で、歯垢の中に生息していた細菌は死滅しています。そのため、歯石自体がむし歯や歯周病を引き起こすことはありません。
ただ先述した通り、歯石の表面には凹凸がありザラザラとしています。一度歯石が付着すると、上に歯垢がつきやすくなり、さらにそれが歯石となって…を繰り返すでしょう。
最終的に、蓄積した歯垢が原因でむし歯や歯周病になってしまいます。
インビザライン矯正に及ぼす影響
歯石が蓄積すると、インビザラインに次のような影響が生じます。
1.歯の移動が計画通りに進まなくなる
2.むし歯や歯周病にかかるリスクが高まる
一体どういうことなのか、詳しく解説します。
1.歯の移動が計画通りに進まなくなる
インビザラインは、透明のマウスピース装置を常時装着して歯を動かします。
歯石が付着すると、装置が浮いたり歯の移動が阻害されたりする原因になるのです。
当初のシミュレーション通りに歯を動かせないと、治療期間に影響が出ます。場合によっては、装置を作り直すことになり治療が長引くでしょう。
2.むし歯や歯周病にかかるリスクが高まる
歯石が付着していると、歯垢が蓄積しやすくなるのは先ほどお伝えした通りです。
歯石自体が原因になることはなくとも、その後付着する歯垢によってむし歯や歯周病になる可能性があります。
インビザラインの治療中は、口腔トラブルを引き起こさないよう特に入念なケアを行うことが大切です。自宅でのセルフケアだけでなく、必要に応じて歯科医院でのプロケア(歯科クリーニングなど)を受けるようにしてください。
歯石が付着しやすい人はいるの?
実は体質によって、歯石のつきやすさが異なります。
歯石が付着しやすい人の特徴は、次の通りです。
1.アルカリ性の唾液である
2.唾液の分泌量が多い
3.唾液の質がサラサラとしている
1つずつ、詳しく説明します。
1.アルカリ性の唾液である
「歯に残った食べかすをエサにし、むし歯菌が酸を放出して歯の表面を溶かす」というのが、むし歯になる基本のメカニズムです。
アルカリ性の唾液であれば、むし歯菌が出した酸を中和させられます。「再石灰化」といって、溶かされるはずのカルシウムやリンを歯の表面へ戻せるのです。
ただ唾液中のカルシウムやリンが、歯垢と結合すると歯石になります。
つまりアルカリ性の唾液の人は、むし歯になりにくい一方で歯石を溜めやすい傾向にあるでしょう。
2.唾液の分泌量が多い
唾液量が多い人は、歯の再石灰化を促す力が強い傾向にあります。そのため、歯石が付着しやすくなるでしょう。
3.唾液の質がサラサラとしている
唾液がサラサラとしている人も同様に、歯垢の再石灰化を促す力が強い傾向にあります。そのため、歯石がつきやすくなるでしょう。
今回は、歯石の付着がインビザラインに及ぼす影響について説明しました。
口腔内に歯石を溜めないようにし、計画通りインビザラインを進めて整った歯並びを手に入れましょう。
次回も引き続き「歯石」をテーマに、詳しくお話しします。