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矯正治療

歯並びだけでなく「姿勢」や「呼吸」も変わる?MFT(口腔筋機能療法)の驚くべき効果

2026/05/19 | 矯正治療

愛知県刈谷市 NICO矯正歯科
日本矯正歯科学会 認定医 院長

野村隆之 院長紹介はこちら

 

 

 「歯医者に来たのに、なぜ舌の動かし方の練習をするの?」 「子供がいつも口をぽかんと開けているけれど、これって歯並びに関係ある?」

 NICO矯正歯科の診療室で、MFT(口腔筋機能療法)の説明をすると、多くの親御様や患者様が驚かれます。MFTとは、お口の周りの筋肉(舌、唇、頬など)のバランスを整え、正しく機能させるための訓練プログラムのことです。

 実は、私たちの歯並びは、「内側からの舌の力」と「外側からの唇や頬の力」が、ちょうど均衡を保つ場所に並ぶようになっています。このバランスが崩れていると、どんなに高価な装置で歯を動かしても、治療が思うように進まなかったり、装置を外した後にすぐ「後戻り」してしまったりするのです。

 今回は、お口周りの筋肉トレーニングがもたらす、歯並びを超えた健康へのメリットについて深掘りしていきます。

1.MFT(口腔筋機能療法)とは何か?

 MFT(Oral Myofunctional Therapy)は、直訳すると「口腔筋機能療法」といいます。私たちは無意識のうちに、1日に何千回も「飲み込む(嚥下)」という動作をし、呼吸をし、言葉を発しています。これらの動作を司る筋肉が正しく使われていない状態を改善するのが、MFTの目的です。

 具体的には、以下のような状態を目指します。

 ・舌の正しい位置(スポット): 舌の先が上顎の正しい位置についていること。

 ・正しい飲み込み方: 舌を突き出さず、お口の周りの筋肉に余計な力を入れずに飲み込めること。

 ・正しい唇の状態: 常に唇が楽に閉じられ、鼻で呼吸(鼻呼吸)ができていること。

 これらは一見当たり前のことのように思えますが、現代の子供たち(そして大人の方も)は、食生活の変化や生活習慣により、これらの機能が未発達なケースが非常に増えています。

2.歯並びを悪くする「真犯人」は筋肉のアンバランス

 「出っ歯」や「受け口」、「ガタガタの歯並び」には、遺伝以外にも明確な原因があることが多いのです。それが、お口の周りの筋肉の「悪い癖」です。

舌が歯を押し出している

 例えば、飲み込むときに舌を前歯の間に突き出す癖があると、24時間、常に矯正装置とは逆方向の力が歯にかかり続けます。これが原因で、上下の前歯が噛み合わなくなってしまったり(開咬)、上の前歯が前に突き出したり(上顎前突)します。

唇の力が弱い

 「口ぽかん」の状態が続くと、外側から歯を押さえる力が働きません。すると、内側からの舌の力に負けてしまい、歯列が外側に広がったり、乾燥によって虫歯や歯周病のリスクが高まったりします。

 MFTは、こうした「歯並びを崩そうとする原因」そのものを根本から取り除く治療なのです。装置が「ハードウェア」の改善だとしたら、MFTは「ソフトウェア(使い方)」のアップデートと言えるでしょう。

3.「姿勢」と「舌」の意外な深いつながり

 MFTを行うと、多くの方が「姿勢が良くなった」と感じられます。これは偶然ではなく、解剖学的な根拠があります。

舌は「姿勢のコントロールタワー」

 舌は大きな筋肉の塊であり、その根元は「舌骨(ぜっこつ)」という骨を通じて、首や肩、鎖骨周りの筋肉とつながっています。 舌が正しい位置(上顎)にピタッと吸い付いているとき、頭は背骨の真上の正しい位置に安定しやすくなります。

「口ぽかん」が猫背を作る

 逆に、舌が下に落ちて口が開いている状態だと、気道を確保するために無意識のうちに頭を前に突き出すような姿勢になります。これが、いわゆる「ストレートネック」や「猫背」を引き起こす一因となるのです。 MFTによって舌の位置を上げ、鼻呼吸を定着させることは、体幹を安定させ、美しい立ち姿を作るための土台作りにもなるのです。

4.「鼻呼吸」への転換がもたらす全身へのメリット

 MFTの最終的なゴールの一つは、完全な「鼻呼吸」の定着です。人間にとって本来あるべき呼吸法である鼻呼吸には、驚くべき健康効果があります。

 ・天然のフィルター機能: 鼻から息を吸うことで、空気中のゴミやウイルスが除去され、湿度と温度が適切に調整された状態で肺に届きます。これにより、風邪やアレルギー、喘息の予防につながります。

 ・脳の冷却効果: 鼻呼吸は脳を冷やす役割も果たしており、集中力の向上や、睡眠の質の改善に寄与すると言われています。

 ・お顔立ちの発育: 成長期に鼻呼吸をマスターすることで、上顎が正しく発育し、凛とした引き締まった表情(アデノイド顔貌の予防)へと導かれます。

5.今日からできる!MFT(口腔筋機能療法)の代表的なトレーニング

 MFTは「筋トレ」ですので、一度やり方を覚えればご自宅で継続できるのが大きな強みです。NICO矯正歯科で実際にお伝えしている、基本のメニューをいくつかご紹介します。

 ・スポット(舌の定位置)の確認 まずは、舌の先がどこにあるべきかを知ることから始まります。上顎の前歯の少し後ろにある「ぷっくりとした膨らみ(スポット)」に舌の先を置きます。この時、歯に舌が触れないのが正解です。

 ・ポッピング(舌の吸い上げ) 舌全体を上顎に吸い付け、口を大きく開けてから「ポンッ」と音を立てて弾ませます。これは舌を上に持ち上げる力を鍛える、最も基本的で重要な練習です。

 ・オープン&クローズ(唇のストレッチ) ボタンなどを使ったトレーニングや、唇を「ウ・イ」と大きく動かす練習です。お口周りの筋肉(口輪筋)を鍛えることで、無理なく自然に口を閉じられるように導きます。

 ・正しい飲み込みの練習 コップの水を飲むとき、舌を前に突き出さず、奥に送り込む正しい動きを身につけます。鏡を見て、飲み込む瞬間に口元に余計な力が入っていないかをチェックします。

6.矯正後の「後戻り」を防ぐ、最強のディフェンス

 せっかく数年かけて綺麗になった歯並びが、装置を外した後に崩れてしまう「後戻り」。その原因の多くは、実は「筋肉の癖が治っていなかったこと」にあります。

 歯は、非常に繊細なバランスの上に成り立っています。もし舌が毎日数千回も前歯を裏から押し続けていたら、どんなに強力なリテーナー(保定装置)を使っていても、歯は少しずつ動いてしまいます。

 MFTは、いわばお口の中の「環境整備」です。 筋肉のバランスを整えることは、「歯が動かないような圧力を自分でコントロールすること」に繋がります。装置によるハード的な矯正と、MFTによるソフト的な機能改善。この両輪が揃って初めて、一生崩れない「本物の美しさ」が手に入るのです。

7.大人にこそ知ってほしい、MFTの「アンチエイジング」効果

 MFTは決してお子様だけのものではありません。50代以降の大人の矯正においても、MFTを取り入れるメリットは計り知れません。

 ・顔のたるみ・二重あごの改善 舌は首や喉の筋肉と繋がっています。舌が正しい位置に引き上げられると、フェイスラインがシャープになり、あごの下のたるみがスッキリとする効果があります。

 ・滑舌(かつぜつ)の向上 「最近、言葉が聞き取りにくいと言われる」「サ行やタ行が発音しにくい」といったお悩みは、舌の筋力低下が原因かもしれません。MFTで舌の可動域を広げることで、ハキハキとした若々しい話し方を取り戻せます。

 ・誤嚥(ごえん)の予防 将来的に重要になる「飲み込む力(嚥下機能)」を維持することにも直結します。一生自分の口でおいしく食べるための、最高の健康法でもあるのです。

8.まとめ お口は「体全体の玄関」である

 歯並びを整えることは、人生の質(QOL)を高める素晴らしい決断です。そこにMFTという視点を加えることで、矯正治療は単なる「見た目の改善」から、「一生の健康を守るための体質改善」へと進化します。

 正しい呼吸、正しい姿勢、そして正しい筋肉の使い方。 それらが揃ったとき、あなたの笑顔は内側から輝き出し、体全体が健やかなリズムを刻み始めます。NICO矯正歯科と一緒に、お口の可能性を最大限に引き出してみませんか?

9.よくある質問(Q&A)

Q1. どのくらいの期間、練習を続ける必要がありますか?

 A1. 筋肉の癖を書き換えるには時間がかかります。まずは半年から1年程度、毎日の習慣にすることを目指します。矯正治療の期間中、並行して行い、定着させていくのが理想的です。

 

Q2. 練習は1日にどのくらい時間をとればいいですか?

A2. 1回3分〜5分程度を、1日2回〜3回行うのが基本です。「お風呂の中」や「寝る前」など、生活のルーティンに組み込むことで、無理なく継続いただけます。

 

Q3. 子供が飽きっぽくて、続けられるか不安です。

A3. 当院では、お子様のやる気を引き出すためのスタンプカードや、進歩が目に見える仕組みを取り入れています。完璧を目指すよりも「まずは楽しくお口を動かす」ことから始めましょう。

 

Q4. 装置をつけていなくても、MFTだけで歯並びは治りますか?

A4. 軽度の不正咬合であれば、MFTだけで劇的に改善するケースもあります。しかし、基本的には装置による歯の移動と、MFTによる機能改善を組み合わせることで、最も効率よく、美しい仕上がりを目指せます。

 

Q5. MFTに痛みはありますか?

A5. 痛みは全くありません。普段使っていない筋肉を動かすので、最初は「少し疲れるな」と感じるかもしれませんが、それは筋肉が正しく使われ始めている証拠です。

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