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矯正治療

矯正するべき歯並びとしなくてもいい歯並びについて

2024/03/25 | 矯正治療
愛知県刈谷市 NICO矯正歯科
日本矯正歯科学会 歯科医師 院長 野村隆之

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鏡を見るたびに、「もう少し歯並びがきれいだったら」と思うことはありませんか? 近年、SNSの普及やデンタルIQ(歯に対する意識)の高まりにより、大人になってから矯正治療を検討する方が急増しています。

しかし、ここで一度立ち止まって考えてみましょう。 「矯正治療は、すべての人にとって絶対に避けては通れない道なのでしょうか?」

結論は「No」です。 世の中には、一見すると少しデコボコしていても、機能的に全く問題がなく、一生健康に過ごせる歯並びの方もいらっしゃいます。一方で、一見きれいに見えても、実は奥歯がボロボロになりやすい「危険な歯並び」の方もいます。

矯正治療は、費用も期間もかかる大きな決断です。だからこそ、周りの雰囲気に流されるのではなく、「なぜ治療が必要なのか」「自分の歯並びは治療すべきカテゴリーに入るのか」を正しく理解することが重要です。

今回は、歯科医学的な観点から「矯正治療を強く推奨するケース」と「必ずしも必要としないケース」の違いについて、そのメカニズムを含めて徹底的に解説します。この記事が、あなたの迷いを晴らす羅針盤となれば幸いです。

歯科医が「矯正した方がいい」と判断する3つの絶対基準

 私たち歯科医師が患者さんのお口を診るとき、単に「きれいに並んでいるか、いないか」だけを見ているわけではありません。主に以下の3つの視点で将来的なリスク評価を行っています。これらに該当する場合、矯正治療は単なる美容整形ではなく、将来の健康を守るための「予防医療」としての意味合いが強くなります。

1. 「噛み合わせ」に機能的な欠陥がある

 歯の最大の役割は、食べ物を噛み砕く(咀嚼)ことです。 噛み合わせが悪いと、食事の効率が下がるだけでなく、以下のような全身トラブルの引き金になります。

 ・消化器官への負担: 食べ物を十分に粉砕できずに飲み込むことになるため、胃腸に大きな負担がかかり、栄養吸収の効率も悪くなります。

 ・顎関節症のリスク: 上下の歯が均等に当たらないと、噛むたびに顎の関節に偏った力がかかります。これが数年、数十年と蓄積すると、「口が開かない」「顎が鳴る」「痛い」といった顎関節症を引き起こします。

 ・不定愁訴(頭痛・肩こり): 顎を動かす筋肉は、首や肩の筋肉と密接につながっています。噛み合わせのズレは筋肉の慢性的な緊張を招き、原因不明の偏頭痛や頑固な肩こりを引き起こす原因となります。

2. 「セルフケア」が物理的に困難である

 「8020運動(80歳で20本以上の歯を残そう)」をご存知でしょうか。歯を失う二大原因は「むし歯」と「歯周病」ですが、これらを予防するためには毎日の歯磨きによるプラークコントロールが不可欠です。

 しかし、歯が複雑に重なり合って生えていると、どんなに高級な歯ブラシを使っても、毛先が物理的に届かない「死角」が生まれてしまいます。

 ・プラーク(歯垢)の温床:磨き残したプラークは、わずか数日で石のような「歯石」に変わり、細菌の強固な要塞となります。

 ・負の連鎖: 「歯並びが悪い」→「磨けない」→「むし歯・歯周病になる」→「治療してもまた再発する」。この悪循環を断ち切るための根本治療こそが「矯正」なのです。

3. 「審美面(見た目)」が心に影を落としている

 「たが見た目」と思われるかもしれませんが、心理的な影響は計り知れません。

 ・コミュニケーションの阻害: 歯並びを気にして、人前で思い切り笑えない、手で口を隠して話す癖がある。これは対人関係や仕事において大きなマイナス要因になり得ます。

 ・Eラインと横顔: 出っ歯や受け口は、横顔のバランス(Eライン)を崩します。 自信を持って笑顔になれることは、メンタルヘルスの向上に直結し、人生の質(QOL)を大きく高める重要な要素となります。

放置は危険!矯正治療が「推奨される」4つの歯並び

 ここでは、具体的な症状別に、なぜ治療が必要なのかを深掘りします。ご自身の歯並びと照らし合わせてみてください。

八重歯・乱杭歯(叢生 – そうせい)

【状態】 顎が小さく、歯が並ぶスペースが足りないために、歯が前後互い違いに重なったり、飛び出したりしている状態です。日本ではかつて「八重歯はかわいい」とされる文化がありましたが、医学的には多くのリスクを孕んでいます。

【なぜ治療が必要?】

 ・犬歯の役割放棄: 八重歯(犬歯)は本来、顎を横に動かしたときにガイド役となり、奥歯を守る非常に重要な役割(犬歯誘導)を持っています。八重歯が高い位置にあるとこの役割を果たせず、奥歯に過剰な負担がかかり、将来的に奥歯が割れたり抜けたりするリスクが激増します。

 ・最強のむし歯リスク: 重なっている部分はフロスも通しにくく、口の中で最もむし歯になりやすい危険地帯です。

出っ歯(上顎前突 – じょうがくぜんとつ)

【状態】 上の前歯が極端に前に飛び出している、あるいは上顎全体が前に出ている状態です。

【なぜ治療が必要?】

 ・外傷のリスク: 転んだりスポーツでぶつかったりした際、前歯が唇を突き破ったり、歯そのものが折れたりするリスクが非常に高いです。

 ・ドライマウス(口の乾燥): 歯が出ていると唇が閉じにくいため、無意識に「口呼吸」になります。口の中が乾燥すると唾液の殺菌作用が働かず、むし歯、歯周病、口臭の原因になります。また、喉から直接ウイルスが入り込むため、インフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。

受け口(下顎前突 – かがくぜんとつ / 反対咬合)

【状態】 下の歯が上の歯より前に出ている状態です。「しゃくれ」とも呼ばれ、骨格的な要因が強いケースも多いです。

【なぜ治療が必要?】

 ・「8020」達成率の低さ: 衝撃的なデータですが、80歳で20本以上歯が残っている方の中に、受け口の噛み合わせの人はほとんどいないという調査結果があります。それほど、受け口は特定の歯への負担が大きく、年齢とともに歯を失いやすい噛み合わせなのです。

 ・発音障害:サ行やタ行の発音が不明瞭になりやすく、会話にコンプレックスを持ちやすい傾向があります。

開咬(かいこう / オープンバイト)

【状態】 奥歯はカチッと噛み合っているのに、上下の前歯が噛み合わず、隙間が開いている状態です。

【なぜ治療が必要?】

 ・前歯が仕事をしない: 前歯で麺類を噛み切ったり、サンドイッチのハムを食べたりすることができません。

 ・奥歯の短命化: 前歯が噛まない分、噛む力(体重の約1倍〜数倍)のすべてが奥歯にかかります。過重負担により、奥歯が割れる、すり減る、歯周病が悪化するといったトラブルが早期に現れます。個人的には、最も早期治療をおすすめしたい歯並びの一つです。

必ずしも矯正しなくてもいいケース(経過観察)

 一方で、以下のような場合は「直ちに治療が必要」とは限りません。

すきっ歯(空隙歯列)で、噛み合わせが安定している場合

【判断のポイント】 前歯に隙間があっても、奥歯がしっかりと噛み合い、顎の動きに問題がない場合、機能的なリスクは比較的低いと言えます。欧米では「富の象徴」としてチャームポイントにされることもあります。 ただし、隙間から息が漏れて発音がしにくい場合や、見た目を気にして心から笑えない場合は治療の対象となります。

軽度のガタつき(捻転)で、清掃ができている場合

【判断のポイント】 1本だけ少し捻れている、わずかに傾いているといった程度で、ご自身で丁寧にフロスや歯ブラシを使いこなし、歯肉炎などを起こしていない場合です。 噛み合わせのバランスを崩しておらず、定期的な歯科検診でクリーニングを受けることで健康を維持できるなら、無理に動かす必要はありません。

自己判断は禁物!「隠れリスク」を見抜くために

ここまでお読みいただき、「自分はどっちだろう?」と迷われた方も多いと思います。 実は、鏡で見ただけでは分からない「隠れリスク」が存在します。

 ・歯根の長さ: 見えている歯はきれいでも、歯茎の中の根っこが短い場合、矯正治療のリスクが高まることがあります。

 ・親知らずの影響: 今はきれいでも、骨の中に埋まっている親知らずが手前の歯を押し続け、将来的に歯並びを崩す可能性があります。

 ・顎の骨のズレ:顔の左右非対称など、骨格レベルのズレはレントゲンを撮らないと正確には分かりません。

 これらを判断できるのは、専門的な検査(レントゲン、CT、セファロ分析など)だけです。 「矯正が必要かどうか」を判断するためだけに歯科医院に行っても全く問題ありません。むしろ、今の状態を正しく知ることは、将来の健康を守るための賢い投資です。

最後に あなたの人生に、矯正治療は必要ですか?

 歯列矯正は魔法ではありませんが、人生を好転させる強力なツールであることは間違いありません。

 ・機能の改善:一生、自分の歯で美味しく食事をするための土台作り。

 ・見た目の改善: コンプレックスから解放され、自信を持って笑える毎日。

 この2つを手に入れることが、あなたにとってどれくらいの価値があるでしょうか?

 もし、「今のままでも十分に幸せで、健康上の不安もない」と確信できるなら、矯正治療は不要です。 しかし、「将来歯を失うのは怖い」「口元を隠さずに笑いたい」という思いが少しでもあるなら、一度専門医の扉を叩いてみてください。

 当院では、「矯正を売る」ことよりも「患者さんが自分の歯の状態を正しく理解する」ことを最優先にカウンセリングを行っています。 「治療する・しない」は、話を聞いてからゆっくり決めれば良いのです。まずは、あなたのお口の中で今何が起きているのか、一緒に確認してみませんか?

 適切な情報収集と、納得のいく選択。 それが、あなたの10年後、20年後の笑顔を守ることにつながります。私たちは、そのためのサポートを全力で行います。

【Q&A】矯正治療の必要性に関するよくある質問

Q1. 大人になってからの矯正は、「見た目」以外にやる意味がありますか?

A. はい、むしろ大人こそ「歯の寿命を延ばす」ための矯正が重要です。

 記事内でも触れましたが、歯並びが悪いことの最大のリスクは、加齢とともに進行する「歯周病」です。歯が重なっている部分は掃除がしにくく、40代、50代と年齢を重ねるにつれて歯を失う大きな原因となります。

 矯正治療でメンテナンスしやすい環境を作ることは、将来的にインプラントや入れ歯になるリスクを減らすこと(予防医療)に直結します。「将来の医療費や健康への投資」として、大人になってから治療を決断される方は非常に多いです。

Q2. 前歯のガタつきだけが気になります。部分矯正でそこだけ治せば十分ではないですか?

A. 噛み合わせに問題がなければ可能ですが、慎重な判断が必要です。

 「見た目」を整えるだけであれば部分矯正で可能なケースもあります。しかし、記事で解説した「噛み合わせの機能的欠陥(奥歯の負担や顎関節への影響)」がある場合、前歯だけをきれいに並べても、根本的な問題は解決しません。

 むしろ、無理に前歯だけ動かすことで噛み合わせが悪化することさえあります。 「部分矯正で済むか」「全体矯正が必要か」は、レントゲン等で奥歯の状態や骨格を見て初めて判断できますので、まずは検査を受けてみることをおすすめします。

Q3. 今は痛みもなく、ご飯も普通に食べられています。それでも矯正は必要ですか?

A. 「痛みがない=問題がない」とは限りません。

 人間の体は適応能力が高いため、噛み合わせが悪くても無意識に顎をズラして噛むことで、なんとか機能を維持しているケースがよくあります(適応)。 しかし、それはあくまで「無理をしている状態」です。長年の負担が蓄積し、ある日突然、歯が割れたり顎が痛くなったりすることがあります。

 記事にある「様子見でいいケース」に該当するか、それとも「隠れリスクがあるケース」かを知るために、痛みがない今のうちに専門家のチェックを受けておくのが一番の安心につながります。

 
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